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映画「ふれる」レビュー 重要な事は言葉、利用する事に気をつけて

10月4日に公開された映画「ふれる」について感想レビューです。

あらすじ

主人公秋は家庭環境の影響から言葉を発するのが面倒になりいつも孤独だった。秋は生活する島での迷信となっている、ふれると人の心が読めると言う、ハリネズミの様な不思議な生き物「ふれる」を見つけ、ふれるの能力のおかげで仲良くなりたかった2人の友人ができた。大人になり3人とふれるは島をでて上京するが、ある事件がきっかけで心の声が聞こえなくなっていることに気が付く。友情が揺れ始める中、ふれるに隠されていたもう一つの力が徐々に明らかになっていく。

絵のクオリティ

最初の印象はまず絵のクオリティがとてもリアルだった、東京の町の背景、奥行きのあるリアリティと映像美は丁寧に描かれていた。

ストーリー展開

序盤は主人公秋が不思議な生き物ふれるを見つける、仲良くなった3人が上京してからの日常が描かれるが、中盤からのファンタジー要素は強くなり、物語が大きく動き出す、現実と非現実を行ったり来たりで、落ちが読めない分飽きることはなかった。

ふれるの能力

話の重要な部分は不思議な生き物ふれるの持つ人の心の声が聞こえると言う能力だ。この能力ともう一つ隠されたふれるの能力によって3人の友情が揺れ動きだします。この能力が3人にとって便利であったが、一転してしまうところに注目。

読めなかった仲間の心

主人公の秋が言葉を使わない事がこのストーリーの始まりであると思う、秋は人の心の声が聞こえる便利な機能を持つ島では迷信の「ふれる」に助けを求めて逃げ込んだのだ。人のいい面ばかりを取り繕う事が、不信感を招くこと、一方で悪い面が見える事で安心を生むこともある。みんな日々の暮らしで理解している通り、不信と安心を生む根幹には人から発する言葉には本音ばかりではないからだ。
この前提をふれるによって見えなくなったまま大人になった3人は、ふれるの持つ2つ目の能力を知って気づくことになる。

言葉を使って伝える事は大事

秋は言葉よりも、手が先に出たり、行動が先行してしまう面があった。ふれるの機能で人の心が読めることに頼りきっていた。言葉は心の内を形にして伝えるツールである事、間違った使い方をすれば人を傷つけてしまったり、誤解を与えることもあるけれど、秋の様に言葉と言うツールを利用しないことが招くリスクは大きい。

利用の仕方

このストーリーで「利用」と言う言葉にも注目したい、言葉は人間のコミュニケーションツールだから本音は見えない、どんなに想像力を使っても人の気持ちは言い当てられない。人の気持ちはわからない。劇中でも描かれているが、当然恋愛感情を持つことでも互いの思いにすれ違いは起こる。上手く使えば自分の思った通りにコントロールできる「言葉」も「人」も「便利な機能」も利用の仕方が大事だと言うメッセージが込められている気がしました。

掴みどころのない、抽象的な事の表現

この映画を鑑賞して、単にふれると言う特殊能力を持つ生き物とが織りなすファンタジー要素を含む映画では済まない感じがしました。3人が上京してから、島と違った環境での人間社会で、人の嫌な面、偽善、また、そればかりでもない良き人、愛情、友情など、総じて抽象的なことを、3人が経験する姿を通して具体的に表現されていたのだと思います。現実をリアルに描かれた作品でした。

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